風邪に抗生物質?
2017.12.27
理事長の伊藤です。
私は循環器を専門とする内科医ですが、何を専門とする内科医でもじつは風邪については詳しく習ったりしていません。
風邪をひいたと外来に来られる方を診ていくうちに自然と学習していくという感じです。
なぜなら風邪は放っておいても自然に良くなるからです。
風邪のようですね。
と私も何気なく患者さんに言いますが、そもそも風邪の定義とは何でしょう?
鼻水、咳、咽頭痛を主な症状とするウイルス性の感染症です。
時間差はあるもののこの3つの訴えがある場合はほぼ風邪と言っていいと思います。
熱はあってもなくても構いません。
風邪ウイルスに効く薬はないので根本的な薬はありません。
鼻水や咳や咽頭痛を抑える薬を処方してあとは時が過ぎるのを待つのみです。
症状が軽ければ葛根湯といった漢方薬だけでもいいです。
ここで困るのは患者さんの中には抗生物質を処方してほしいと要望される方がいることです。
説明しても納得されない空気が漂います・・・
風邪のような症状で確かに抗生物質が必要な場合もあります。
特に肺炎などは抗生物質が必要となります。ウイルスではなく細菌が原因です。
現場ではどのように見極めるのでしょう?
風邪は前述したように鼻水、咳、咽頭痛という症状が揃っています。
肺炎は咳、痰はありますが鼻水や咽頭痛は伴っていません。
鼻水ずるずるの肺炎というのは違和感があります。
そして熱が高かったり、重症感があります。(ご高齢の方の場合、何か元気がなくおかしいという程度で肺炎ということもあります。)
そうなれば風邪と違うということになって胸部レントゲンや採血など行い、肺に影があったり採血で白血球が上昇したりしていて抗生物質が必要、となります。
他にも細菌性の咽頭炎、副鼻腔炎など風邪と紛らわしい疾患がいくつかあります。
風邪(ウイルス)場合は鼻、のど、気管支、など気道全体に炎症を及ぼすためそれらに対する症状を伴いますが、細菌性の場合はターゲットが限られ症状が絞られます。
喉だけ痛いそれも左側、鼻水がでて頬が右側だけ腫れて痛む、などはそれぞれ細菌性咽頭炎、細菌性副鼻腔炎が疑われます。
採血すると白血球が上昇していて抗生物質が必要だとなります。
風邪に抗生物質は必要ありません。