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Disease

風邪・インフルエンザ・コロナ

風邪について

私は循環器を専門とする内科医ですが、何を専門とする内科医でもじつは風邪については詳しく習ったりしていません。風邪をひいたと外来に来られる方を診ていくうちに自然と学習していくという感じです。
なぜなら風邪は放っておいても自然に良くなるからです。
風邪のようですね。と私も何気なく患者さんに言いますが、そもそも風邪の定義とは何でしょう?

鼻水、咳、咽頭痛を主な症状とするウイルス性の感染症です。
時間差はあるもののこの3つの症状がある場合はほぼ風邪と言っていいと思います。
熱はあってもなくても構いません。
風邪ウイルスに効く薬はないので根本的な薬はありません。
鼻水や咳や咽頭痛を抑える薬を処方してあとは時が過ぎるのを待つのみです。
症状が軽ければ葛根湯といった漢方薬だけでもいいです。

ここで困るのは患者さんの中には抗生物質を処方してほしいと要望される方がいることです。
説明しても納得されない空気が漂います・・・

風邪のような症状で確かに抗生物質が必要な場合もあります。
特に肺炎などは抗生物質が必要となります。
ウイルスではなく細菌が原因です。現場ではどのように見極めるのでしょう?

風邪は前述したように鼻水、咳、咽頭痛という症状が揃っています。
肺炎は咳、痰はありますが鼻水や咽頭痛は伴っていません。
鼻水ずるずるの肺炎というのは違和感があります。
そして熱が高かったり、重症感があります。(ご高齢の方の場合、何か元気がなくおかしいという程度で肺炎ということもあります。) そうなれば風邪と違うということになって胸部レントゲンや採血など行い、肺に影があったり採血で白血球が上昇したりしていて抗生物質が必要、となります。

他にも細菌性の咽頭炎、副鼻腔炎など風邪と紛らわしい疾患がいくつかあります。
風邪(ウイルス)場合は鼻、のど、気管支、など気道全体に炎症を及ぼすためそれらに対する症状を伴いますが、細菌性の場合はターゲットが限られ症状が絞られます。
喉だけ痛いそれも左側、鼻水がでて頬が右側だけ腫れて痛む、などはそれぞれ細菌性咽頭炎、細菌性副鼻腔炎が疑われます。
採血すると白血球が上昇していて抗生物質が必要だとなります。風邪に抗生物質は必要ありません。

インフルエンザについて

インフルエンザの症状は突然の38℃を超える高熱や関節痛、全身の筋肉痛です。 
火照った顔で来院され、風邪より症状が強いです。普通の風邪と同様、鼻水、咳、咽頭痛もありますが、初期は高熱、関節痛だけの方が多いです。

このインフルエンザですが
1. インフルエンザの迅速検査をするかどうか
2. インフルエンザの治療をどうするか
は悩ましいです。

1. 「インフルエンザの迅速検査をするかどうか」について

迅速検査は発症後12時間経っていないと陽性になりにくく、さらに3人に1人は偽陰性(インフルエンザ陽性なのに陰性と判定される)という報告もあります。
よって迅速検査で陽性と判定されればインフルエンザとして治療しますが、陰性だからといってインフルエンザでないとは言えないことになります。
結局、その地域での流行状況、インフルエンザと診断された方が近くにいたか、と本人の症状から判断することになります。
ということは、迅速検査をしなくてもいいのではないかと疑問が生じます。
答えはその通りです。
実際の現場では、迅速検査を行い陽性ならインフルエンザと診断、陰性でも上記のような状況証拠がそろっていればインフルエンザと判断します。
迅速検査が陰性で症状も典型的でない、インフルエンザの方との接触歴もない場合はインフルエンザではないと判断します(この状況で迅速検査をするのは患者さんが強く希望された時です)。
インフルエンザと判断した場合は抗インフルエンザ薬を使用します。
最近は専ら吸入1回の投与で済むイナビルというお薬を使用します。

2. 「インフルエンザの治療をどうするか」について

そもそもインフルエンザは普通の風邪と同様自然に治るウイルス感染症です。
幼児や高齢者、基礎疾患があるなど重症化しやすい方は積極的に抗インフルエンザ薬を使用しますが、通常の成人はその必要性はあまりありません。
解熱剤や麻黄湯(悪寒、発熱、関節痛などに効果的)だけで経過をみて全く構いません。
健康な成人が抗インフルエンザ薬を使うメリットは解熱が半日程度早くなるだけと報告されています。
そうはいってもインフルエンザと判定されれば抗インフルエンザ薬を望む方が多いのは事実でその気持ちはわかります。
1.2ともに患者さんに説明してできるだけ希望通りに治療していければと考えています。
ちなみにインフルエンザの予防接種は、特にご高齢の方(幼児も)は、できるだけ受けることをお勧めします。
予防接種を受けていればインフルエンザにかかっても重症化はしにくいとされています。